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相続預金であった本当の話し(2)

相続財産

銀行預金に限らず、マンションや住宅等の不動産、又は経営していた会社の未上場の株式、骨董品等に至るまで全ての財産は、その財産を保有する人が亡くなった瞬間から相続財産となって、法定相続人に当然に相続されます。ですので相続人が複数人いた場合、勝手に誰かがその相続財産を処分したりすると、後日別の法定相続人から相続分の請求をされる恐れがあります。法定相続人とは相続財産を受取る権利のある人で民法で定められている人です。

ある時担当していた町工場の経営者が若くして突然亡くなりました。余りも突然の死だったので当然のことながら、その後の事は本人やその周りの人達も何一つ考えてはいませんでした。というのはその経営者は若くして独立し、苦労して一代で一財産を築きあげた人でしたから、かなりの財産を所有しており銀行にも多額の預金があったのです。

経営者はその土地出身の人でしたが、奥さんは遠くの土地から嫁いできた方でした。夫婦二人でかなりの苦労をして来たという事は、出席した葬儀でも話題に上ったものです。多くの人は経営者が亡くなった後、その工場を誰が引き継ぐのかに大きな関心を寄せていました。実は二人には子供がいなかったのです。更にその経営者は若くして両親と死に別れており、その経営者の兄と姉がいるばかりでした。

法定相続分

この経営者のケースでは法定相続人は奥さんと経営者の兄弟なのです。法定相続分は奥さんが4分の3、残りの4分の1を経営者の兄弟二人で分ける事になります。経営者の財産は預金だけで数億円、その他の不動産、更には経営する工場の株式があり合計すると十億は下りませんでした。

御主人が亡くなった後奥さんが銀行にきて色々話していきましたが、経営者である御主人と奥さん二人で築き上げた財産を、御主人の兄弟が受け取る権利がある事にどうしても納得行かない様子でした。しかし、絶対に法定相続分の割り合いで分けなければならない事ではなく、相続人全員の同意があればそちらの方が優先するとの話をすると少し安心した様子で帰って行きました。

後日奥さんと経営者の兄弟で話し合いが持たれたようで、その奥さんが後又銀行に寄って来ました。話しあいの中で、その兄弟が言うには法定相続分は受け取る権利があるので、法定相続分の遺産を貰わない限り、協議書には印鑑を押さない、との言われたと奥さんは涙ながらに語りました。経営者名義の定期預金の引き出しにも印鑑を押さないと言われたので、預金の引き出しも出来ないのです。

遺言書と遺産分割協議

経営者が生前に遺言書をもし残していれば遺産分割は法定相続分より優先します。経営者がもし自分がこの先もうすぐ亡くなると分っていたら、間違いなく出来る限り奥さんに多くの財産、法定相続割合分以上の財産を奥さんに残すような遺言書を書いていたものと思われます。それくらい奥さん思いの経営者でした。しかし今回はそんな事を考えさせる事等一切出来ない程急な最期でした。

遺言書が無い場合は遺産分割協議による、つまり相続人全員による同意に基づく割合での分割であれば法定相続分以外での相続が可能になります。経営者の兄弟と奥さんのこの協議は不調に終わったという事なのです。亡くなった人の名義の預金は、分割協議書が無ければ相続人全員の同意書が無いと引出が出来ません。兄弟はこの引き出しの同意書にも印鑑を押さなかったという事でしょう。

結局最終的には本人同士だけの話し合いでは纏まる事が出来ず調停に持ち込んだ所で、私はその支店を転勤して後にしたので結果については関知していません。奥さんは何もかも厭になったので、全てを畳んで実家に帰ろうかと話していたので、もしかしたら遠く離れた故郷に帰ったのかもしれません。