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定期預金ボーナス獲得運動

以前定期預金の獲得運動というものがありました。主に夏と冬のボーナス時期です。今の現在の銀行の形態からしてみれば、凡そ考えられない事かも知れません。銀行の窓口業務が、ほぼ融資と預金しかなかった時代の話です。

銀行や支店の規模によっても勿論違うでしょうが当時は銀行員の業務は、預金と融資が半々くらいでした。預金と言っても定期預金の勧誘です。普通預金の出金伝票と定期預金申込伝票の2種類を持って預金者の家をひたすら訪問するのです。

ボーナス時期の6月から8月になると月間目標額が担当者ごとに貼り付けられます。私が所属していた銀行では大体月に5,000万円から8,000万円位でした。普通の個人しか担当していない営業職からしてみれば、天文的な数字です。大きな支店に勤務する同僚は、医者や会社経営者を担当していて1回で1,000万円の預金を取っていたりして羨ましくて堪らなかった記憶があります。

支店の業績が振るわずに段々煮詰まって来ると、担当者毎の獲得成績を棒グラフにした大きな表を、支店の一番目につく所に張られたりしたものでした。今考えるとパワハラではないかと思われる程強烈な推進運動が繰り広げられていました。

とにかく預金を集めさえすればその運用で銀行が利益を得る事が出来るとされていた時代だったのです。この定期預金獲得運動は恐らく何十年間も続いてきた銀行の年中行事の様なものだったのです。

利息収入から手数料収入へ

今の銀行経営は投資信託販売や変額保険等に手数料収入に重点を置いています。勿論銀行の収益の柱は今現在でも融資であることには間違いありません。しかしその融資の銀行業務に占める割合は確実に減少しています。

ある大手と呼ばれる地銀の決算書を見てみました。難しい事は抜きに簡単に御説明しますと、平成16年3月期の決算書における収益は1,381億円でした。その年のその銀行の全ての業務における経常利益です。その内利益の内融資の貸出金利息収益は843億円その利益に占める割合は61%です。それから10年後の決算書では、経常利益1,437億円、貸出金利息収益は660億円で貸出利息の占める割合は46%です。それに対して投資信託販売等の手数料収益の役務収益は平成16年3月期で208億円、26年3月期で257億円で、割合も15%から18%に上昇しています。

銀行のビジネスモデルにおいて収益の構成の割合が変わってきたのです。貸出利息の割合が61%から46%になり手数料収入が15%から18%に増加しました。何故こんなに大きな転換があったのかというと、融資という業務は必ずリスクを伴うからです。

担保を取っていても保証を取っていても必ず焦げ付きは発生します。いくら努力して融資して融資量を伸ばしても、巨大な倒産が起こると今まで稼いで来た収益がふっとぶ事もよくある事なのです。反対に保険や投資信託を販売する事により、得る事の出来る手数料はなんのリスクも発生しません。多く販売すればするほど収益はアップします。

どんどん変わる銀行の預金業務

これがビジネスモデル変換の大きな理由です。しかしかと言って融資の必要性が薄れたかというとそういう訳ではありません。販売や構成の比率は下がっても660億円と絶対額は巨額で、やはり収益の柱であって、その融資の原資はやはり預金なのです。

肝心の預金が無くては融資しようとしても出来ないのです。ですから今でも預金運動はどこの銀行でもあっている筈ですが、やはり昔ほどではないようです。

定期預金のお願をして、ひたすら勧誘する時代はとうに終わりを告げました。例えば投資信託の販売は、預金のお願いをするみたいに誰でも彼でもという訳には行きません。きちんとその商品性の説明をして、元本割れする可能性がある事を理解してもらわねばならないからです。

投資信託の販売が銀行窓口で始まった時、トラブルが相次ぎました。多くの人が率の良い定期預金くらいに思って投資信託に投資したのです。販売する側の銀行員の方も認識が甘かった事は否めません。元本割れしてみて初めて投資信託が、定期預金とは全然違う商品である事を認識するような事が相次いだのです。

今ではそんな事が絶対に起こらない様な仕組みを作っており、それになりよりも、銀行員の投資に関する知識が昔とは比べ物にならない位上がっています。銀行の窓口に行って、専用のブースでスーツを着た若い女性が、投資信託のパンフレットを持って熱心に客に説明している姿を見ると、昔お年寄りの家に上がって何度も頼みこんで定期預金をしてもらった時代が懐かしく感じてしまったりします。